唯一の涙
合宿
ーー金曜日
下校を告げるチャイムが鳴り響いて数分後、いつもの足音が聞こえてくる。
私が野球部マネージャーになってからというもの、この足音が聞こえなかった日はなかった。
足音の持ち主は言わずもがな。
私が野球部マネージャーになるきっかけを作った、水野先輩だ。
「河原ー。部活いくぞー」
「はーい」
最初はもう迎えに来るな、ってしつこいくらい先輩に言ったけど、断固として先輩は頷こうとしなかった。
先輩に何を言っても無駄だと悟った私は、毎日先輩の迎えを待っている。
「紀衣、またね」
「んー、先輩と仲良くね〜」
忙しなく日誌にペンを走らせる紀衣。
委員長って大変なんだな……と思う今日この頃。
三日間の合宿練習が幕を開けるのでしたーーー。