唯一の涙
「先輩、今日も特スペあるみたいですよ」
「げ……マジで?あれ殺人級にキツいんだよな」
【特スペ】っていうのは我が野球部に代々受け継がれている、練習メニューだ。
OBの先輩たちがいろいろと手を加えていて、選手の事をよく考えられて作られている。
効果は抜群で、みんなが特スペを認めているから、誰も逆らったりはしないらしい。
「よぅ〜お二人さん、今日も仲の良いことで!!」
「よく毎日続くね、ある意味、尊敬するよ」
靴箱で白石先輩と石神先輩と合流した。
そう言う先輩達こそ、いつも一緒じゃん。人のこと言えないでしょ。
「お前らも似たようなもんだろ?」
私の心の代弁をするかのように先輩が言った。
自分が言ったわけではないけど、ちょっぴりスッキリ。
「何一人でニヤついてんの?不気味なんだけど……」
「なんでもありませんよ!い・し・が・み先輩!!」
ここ数日で分かったことが一つ。
石神先輩とは反りが合わない。所謂、犬猿の仲ってやつ?