唯一の涙

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「河原ちゃん、ご馳走さんでした〜。メッチャ美味かったで〜」



「お粗末様でした。食器、そこに置いておいて下さい」



ランニングを手始めとする厳しいメニューも終わり、食堂で夕御飯。
大人数の料理を作るのは思った以上に大変だったけど、みんなが美味しいと言って食べてくれるから作る甲斐がある。



「河原、俺手伝うわ。そのスポンジ貸して」



「えっ…いいですよ、水野先輩疲れてるのに。私、これくらい一人で大丈夫ですから」



ハードな練習メニューを熟した水野先輩。
他の人たちは疲れて座っているんだから、先輩だって例外じゃないだろう。



「俺の事はいいから。変な気ぃ遣うなっつーの」



言うが早いか、私の手からスポンジを奪って先輩は次々と食器を洗い出した。
こうなってしまった先輩を言い包めるのは無理だ。



もう沢山と言うほど散々言い合いしてきたけど、先輩が折れた試しなんて、ただの一度もないんだから。



「河原ちゃん、俺らも手伝ぅたるわ」



「俺ら……って。勝手に人を頭数に入れないでくれる?」



何故か白石先輩と石神先輩も手伝ってくれて、一人でやる何倍も早く片付いた。



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