唯一の涙

二日目



天気は快晴。



風もそれほど強くなく、絶好の練習日和だ。
洗濯物を干しつつ、バッティング練習をしている彼らの掛け声に耳を澄ます。



「…マネージャー」



ふと、気配を感じる。
振り返ってみると、肘から血を流した錦君が気まずそうに立っていた。



彼は私と同じ学年でクラスも一緒だ。
何度も顔を合わせたけど、二人きりなのは今回が初めて。



「怪我したから、手当てして欲しいんだけど」



「うん。取り敢えず、部屋に戻ろう」



救急箱は私が寝起きしている部屋の押入れの中。
相変わらず眼を合わせてくれない錦君に寂しさを感じながら、先を急いだ。






「ーー良かった、そんなに傷が深くなくてさ。だけど、念のため少し休んで。先生には、私から言っておくから」



使った包帯や消毒液を救急箱に仕舞いながら、微笑む。
錦君の視線は、下を向いたままだった。



「錦君、私何かした?どうして目を逸らすの?」



悩んだり、溜め込んだり、我慢したりするのが嫌いな私。
錦君が私を嫌っているなら、理由を知りたかった。




< 39 / 161 >

この作品をシェア

pagetop