唯一の涙
直ぐに藤堂先生が来て、車を出してくれた。
夜間でもやっている病院は、車でも20分はかかる。
付き添いとして、一緒に車に乗せてもらったけど、こんな時、自分が何をしたら良いのか分からなかった。
ただ、石神先輩の汗を拭って手を握りしめることしか、私には出来なかった。
「石神先輩ーー。もう少しですから、大丈夫……」
「河原っ、しっかり石神を支えろ、振り落とされっぞ‼」
「は……いっ……」
面白いくらい声が震えた。
自分のものなのか、信じられないくらい、か弱い声。
ーー似てる、あの時と。
お婆ちゃんの時と、怖いくらいよく似てるんだ。
あの時も、私は何もできなかった。
もう少し私が、お婆ちゃんに気を遣っていたら違う未来があったかも知れないのに。
お婆ちゃんが助からないほどの病を抱えていたなんて、思いもしなかった。
【ごめんなさい】
心の中で、何度そう言っただろう。
今でもお婆ちゃんを思い出す度、心の中で呟く。
私の所為で、死なせてしまってごめんなさい……って。