唯一の涙

「河原ぁ‼しっかりしろっ、お前ぇが支えてやんねぇでどうするんだ‼」



「……‼」



雷に打たれたかのように、全身に電気が奔った。
怖いくらい震えていた手の震えが、嘘のように消えている。



石神先輩の呼吸も少しだけど安定してきてる。
そうだ、この人はお婆ちゃんじゃない。



石神先輩とお婆ちゃんを重ねちゃいけない‼
先輩は、絶対大丈夫なんだから‼



【憎まれっ子世に憚る】



そんな言葉が世界一……いや、宇宙一当てはまる石神先輩が、簡単にやられるわけないんだから。



「先輩、病院着きましたよ‼」



先輩は直ぐに病室に運ばれた。
ただの風邪にしては、かなり熱が高い。



点滴をしてもらって、今日のところはこのまま入院になった。



「藤堂先生、石神先輩のご両親は?」



「今夜は両方とも来られないらしい。『大丈夫だから心配ない』って電話で伝えておいた」



「そうですか……」



二人とも、仕事なのかな。
こんな時ぐらい、来てくれてもいいのに。



石神先輩のこと、心配してないのかな……。






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