唯一の涙
「いい。遠目からだったけど、石神復活してるっぽかったし。俺、石神には悪いけど、河原の事の方が心配だったから」
私が心配?何で?
熱出して病院で点滴してたのは石神先輩だよ?
「先生が『石神と河原は病院に一泊する』って言ってた。でも、それ聞いた時すげぇ頭ん中真っ白になったんだよ」
眼を彼方此方に動かしながらも、先輩は必死に言葉を継いでいく。
最後に意を決したのか、私にぐっと眼を合わせた。
「俺、自分で思ってるよりもお前のこと大事みたいだからさ」
「え……」
一瞬、時間が止まったかと思った。
爽やかな風が吹き抜けて、青葉を揺らす。
先輩に言われた言葉に、私は息を飲んだ。
キラキラと輝く太陽の光が、私と先輩を優しく包んで。
まるで、夢の世界にでも紛れ込んでしまったかのように。
「何言ってんだろうな、俺ってば」
先輩のはにかんだような笑顔を見た瞬間、私の中で何かが堰を切ったかのように溢れ出した。
あぁ、そうだったんだ。
私は、気付いた。
今まで心の奥そこに眠らせていたこの気持ち。
漸く、目覚めた。
私は……
【 ーー水野先輩が好きーー 】
今日、大好きな人の前で、私は恋に目覚めた。