唯一の涙
幼馴染み
三日間の合宿が終わって一週間がたった。
今日は日曜日。
私たち野球部は、昨日の練習試合で見つけた課題を、チーム一丸となって達成させるべく、張り切っていた。
試合は3対2でうちが勝ったけど、まだまだ問題点が多くて…しっちゃかめっちゃか…。
それを見兼ねた先生が考案してくれた新しい練習メニューを取り入れて、私たちは楽しく部活動を送っている。
いつものように、ランニングで使った自転車を置きに倉庫に行くと、ふと誰かの視線を感じた。
周りに人はいない。
気味が悪いから、視線の持ち主を探して辺りを見回すと、教室の窓からこちらを覗く怪しい人影と眼が合った。
怪しい人影が慌てて頭を下げる。
だれ……?
私も戸惑いながら、首だけ下げた。
「ーーねぇ‼」
「わっ⁉」
怪しい人影……基一人の女の子が、いつの間にか息を切らして目の前に立っている。
リボンの色からして先輩だ。
「私、蓮美 沙良(はすみ さら)!……河原 和歌ちゃん……だよねっ?」
人懐っこい笑顔を浮かべる彼女は、とても幼く見えて、自分より年上だと思えない。
小柄な彼女の風貌が、幼さを引き立てていた。
「よいしょっ」
彼女ーー蓮美先輩は、近くにあったコンクリートの段差に腰を下ろした。
隣に座れという意味なのか、自分の隣を叩いた。
変な人……。
そう思いながらも、私は大人しく先輩に従った。