唯一の涙
「幼馴染みだから……」
ふわりと笑う先輩は、どこか悲しげで。
自分でも嫌と思うほど勘の良い私は、蓮美先輩の悲しい笑顔の訳に、直ぐ察しがついた。
先輩も私と同じで、水野先輩が好きなんだーーって。
「さてとっ、そろそろ部活も始まるし戻ろっと。私、吹奏楽なんだ‼
……じゃあ、和歌ちゃんも部活頑張ってね〜」
その後、先輩は何事も無かったかのように振る舞うと、手を振りながら、帰って行った。
風のような人だな。
私はそんな先輩の後ろ姿を、いつまでも見つめていた。
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「……かわ……河原‼」
「……はぃ?」
あれ……ここ、学校じゃない……。
もう夕方だし、いつの間に部活終わってたの?
軽いタイムスリップに陥り、頭の中で混乱を起こしていると、首を傾げた水野先輩が一歩私に近づいた。
「どうした?お前、部活の後半から変だったけど」
「……考え事してただけです。先輩が気にするようなことじゃないですから」
先輩は何か言いたげだったけど、私は眼を逸らして歩き出した。
相変わらず水野先輩は、毎日送り迎えをしてくれてる。
前は何とも思わなかったけど、先輩を好きだと気付いてからは幸せな一時。
「あれ、沙良?」
え……沙良?
もしかして……もしかしたら。
「なっちゃん!!和歌ちゃんも!!」
ですよね〜。