唯一の涙
片想い 〜沙良〜
なっちゃんと初めて会ったのは、いつだっただろう。
確か、保育園の年中さんだった時かな?
あの日も今日みたいに、爽やかな風が吹いてたのを私は憶えてるよ。
あれからいくつも季節を越えて、小学生になって、中学生になって、あっという間に私達は高校二年生になった。
成長していくに連れて、お互い忙しくなって段々すれ違うようになった。
お向かいの家にいる彼が、誰よりも遠く感じて。
何度寂しく思っただろう。
なっちゃんはいつの間にか、誰よりも近くて、遠い存在になったんだ。
私は、なっちゃんが好き。
小さい頃からずっと好きだった。
だけど、なっちゃんは私よりも野球が好きで。
暑い夏も、寒い冬も……全部、野球一筋だった。
そんななっちゃんを支えたくて、何度も言った言葉。
『頑張れっ、なっちゃん‼』
なっちゃんは私がそう言うと、決まって笑って頷いてくれた。
なっちゃんが嬉しいと私も嬉しい。なっちゃんが悲しいと私も悲しい。
ずっと片想いだったなっちゃん……。
高校生になってもなっちゃんは野球一筋で、好きな子なんて作らないと思っていたのに……。
最近、なっちゃんに気になる子が出来たらしいーー。