唯一の涙
「なっちゃん」
二人きりになった帰り道。
すっかり大きくなってしまったなっちゃんの背中を見ながら、声を掛けた。
「んー?」
「和歌ちゃんの事、どう思ってるの?」
「あっ‼」
途中で買ったコーラをなっちゃんは落とした。
運悪くここは下り坂で、コーラの缶はスピードを上げながら転げ落ちていく。
あ〜あ……もうあのコーラ飲めないな。
絶対開けた途端にブシュっ‼だよ。
なっちゃんは慌ててコーラの缶を追って、下り坂を降りて行く。
私も速歩きでなっちゃんの後に続いた。
「なっちゃん……どうなの?」
なっちゃんは無言でコーラの缶を手に取ると、顔だけ私に向けた。
大好きななっちゃんの頬が、うっすらと赤く染まってる。
私ではない、和歌ちゃんのことを想って……。
聞きたくない言葉を、私は聞いた。
「嫌いじゃない。なんて言うか、守ってやりたい……みたいな?」
「そっか……」
分かってた。
なっちゃんが和歌ちゃんのことを、ただの可愛い後輩と思っていないこと。
馬鹿。
あのね、なっちゃん。
男の子が女の子を守ってあげたいと思う理由なんて一つなんだよ。
なっちゃん……。
なっちゃんはきっと、和歌ちゃんに恋してるんだよ。
あーあ。
私……フラれちゃったな。
胸の奥が熱くなって、何かが込み上げて来る。
私は何とかそれをグッと飲み込むと、なっちゃんの前に立った。