唯一の涙
「おはよ、和歌。いつも早いね」
いつも通り一番で登校してきた私。
「野球部の練習は、朝もあるからね。ほら……」
ランニングをしている集団を指すと、紀衣は興味なさげに眼を向けた。
ちらっと、本当にちらっと向けただけで、直ぐに視線を私に戻す。
「そう言えばさ、また告白されたんだって?今度は誰よ」
告白……?
ああ…一昨日のことか。
「隣のクラスの子だよ。名前は確か大浦くん」
そう言うと、紀衣は信じられないと眼を丸くした。
「嘘っ……あの大浦くんが?真面目で、みんなから人気があって、空気も読める大浦くんが?」
「そだよ」
あっ……ランニング終わった。
次はキャッチボールとストレッチだな。
「ちょっと、真面目に答えなさいよ。あんたの事だから、どうせ断ったんでしょうけど、良い加減誰かと付き合ったらどうなの?」
バンっと紀衣が私の机を叩いた。
ビリビリと振動が伝わってくる。