唯一の涙

「頑張れっ、なっちゃん!!」



たった今フラれた私が、なっちゃんにしてあげられること。



それは、なっちゃんの恋を応援すること。



「なっちゃんなら、和歌ちゃんを守れるよ‼」



『頑張れっなっちゃん!!』



小さい頃から言い続けてきた言葉だけど、今は悲しくて堪らなかった。
でも、なっちゃんは……



「……ありがとな」



昔と同じように、笑って頷いてくれるんだね。



「……っ…私、先帰るねっ。今日みんなで外食する約束だったの忘れてた‼」



外食する約束なんてない。
だけどこれ以上、なっちゃんの前で笑っていられる自信ないよ。



私は最後に、今出来る最高の笑顔を浮かべて、なっちゃんに背を向けた。



「……ふっ……っ…」



なっちゃん……なっちゃん……。



一歩踏み出すたびに、溢れ出す涙。



本気で好きだった。



誰よりもなっちゃんの事が好きだった。
小さい頃から変わらなかったこの想いは、実る事なく、終わりを告げる。



高校二年初夏ーー私の長い片想いが、静かに幕を閉じた。





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