唯一の涙

「昨日、お前を見送ってから、沙良に聞かれたんだ」



沙良……蓮美先輩に?
私を見送ってからって事は、私の前では言えなかったってことだ。



一体何を言われたんだろう。



「お前のこと、どう思ってる……ってな」



その時のことを思い出すかのように、先輩は眼を閉じた。



「……それで、先輩はなんて?」



聞いて良かったんだろうか。
聞きたいけど、聞きたくない。



迷った結果、私は聞いてしまった。
先輩が私のことをどう思っているのか、気になったから。



「嫌いじゃない」



恥ずかしそうに、だけど真っ直ぐな眼で先輩は、私にそう言った。



「沙良と別れた後、色々考えてさ……一晩中、お前が頭ん中から離れなくて……」



先輩の一言一言が、心に響き渡るようだった。
心が、全身が震える。



恥ずかしくて堪らないはずなのに、先輩の眼から眼が離せない。







「それで気付いた。俺、河原のこと好きだって」






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