唯一の涙

『俺、河原のこと好きだって』



先輩の言葉が何度もリピートされる。



好きって…後輩としてって訳じゃないよね?
私、少しは自惚れても良いんだろうか……。



嬉しくて、自然に顔が緩む。
私は片手で口元を隠すと、視線を先輩から外した。



もう、限界だった。



全身が熱くて堪らない。
きっと顔だって真っ赤に染まってる。



真っ赤な顔なんて、好きな人に見せたくないのに、今はどうでも良いと感じられる。



「返事、今じゃなくていい。急いでないし。……でも考えとけよ、俺のこと」



先輩は身を翻すと、走った。
気が付けばもう学校の校門の前で、部室は直ぐそこ。



返事なんて決まってるのに、先輩の後ろ姿はどんどん小さくなって、部室へと消えた。



言い損ねた私は、ただその場に立ち尽くす。
耳の奥に残っている、先輩の言葉。



告白なら今まで何回もされてきたのに、こんなにも忘れられない、記憶に残る告白は初めてだった。



特別、すごい告白をされたわけじゃない。



どこにでもある、普通の告白。



でも、世界一幸せな告白だった。





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