唯一の涙

ズルいよ、先輩。



私だって、先輩に告白したいです。
自分だけ言いたいこと言って、ろくに返事も聞かずに走っていくなんて。



言い逃げじゃない、そんなの。



私だって……。



私はギュッと拳を握り締めると、駆け出した。
目指すのは、先輩がいる部室。



肩に掛けた鞄を捨てて、部室の扉を開ける。



運が良いのか、部室には先輩しかいなかった。こんなチャンスを逃すわけにはいかない。
今言わなきゃ、もう言えない気がするんだ。



「河原……っ?」



いきなりの私の登場に驚きを隠せない先輩。
私は後ろ手で扉を閉めると、ゆっくり先輩の元へ歩いて行く。



走った所為か、それとも緊張の所為なのか……。
ドキドキが止まらない。



恥ずかしい……告白ってこんなにも恥ずかしいんだ。
好きな人を、この眼に映すのも、想いを伝えようと、言葉を紡ぐことも。



でも、どうしてだろう。



緊張するけど、全然言える。



「好きです」



先輩、届いてますか?



私の気持ち、ちゃんと聞いてくれますか?



「私も、水野先輩のことが好きです。……多分、初めて会ったあの日からずっと、ずっと」







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