唯一の涙

「好きでもない人と付き合ったって、長続きしないで終わるのがオチっしょ。第一、私に大浦くんはもったいないもん」



これといって自慢できるものを持っていない私。
長所だって特技だってない。



そんな私が人気者の大浦くんと……。
あり得ない。



「あんたねぇ…謙虚過ぎるのは良くないよ?良い所なんていっぱいあるじゃん」



「たとえば?」



「成績だって、運動神経だっていいじゃん。料理できんじゃん、センスいいじゃん、周りに気ぃ使えんじゃん」



ありがち。



そんな人、探せばいくらでもいるよ。
私は普通の女子高生だし。



「私の事はもういいよ。そういう紀衣は?中村先輩と良い感じだったの、この前見たんだけど?」



途端に紀衣の顔が紅くなった。



「…えっと……まぁね…」



言葉を濁して、紀衣はそそくさと離れていく。


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