唯一の涙

「うちの高校に代々伝わってるジンクス何だけどね……!」



クッションに飛び乗りながら、紀衣は眼をキラキラさせて話し出した。
紀衣の気迫に若干押されながらも、相槌を返す。



「高校最後の試合の日にね、彼女が彼氏に、自分が編んだミサンガを贈るの。
ミサンガをした彼氏が試合に勝ったとき、そのカップルは永遠に結ばれるんだって!!」



「……」



なにそれ……。
唖然とするしか、私には選択肢がなかった。



……ん?でも待って。
彼女が彼氏にミサンガをあげるんだよね?



今、紀衣がミサンガを編んでるってことは……もしかして……紀衣…



「中村先輩と付き合ってる……?」



震える指先で紀衣を指すと、紀衣は恥ずかしそうに顔をクッションに埋めた。
顔を隠したまま、コクンと頷く紀衣。



「全然知らなかった……そうなんだ。おめでとう、紀衣。良かったじゃん」



紀衣、入学してからずっと『中村先輩、中村先輩…』って言ってたもんね。
片想いから両想いになったんだ。



だからか。
紀衣が何だか急に大人っぽくなったのは…。



恋が紀衣を成長させたんだね。




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