唯一の涙

紀衣の家を後にして、あてもなく私は歩き続ける。
ブラブラと目的もなく歩くのは嫌いじゃない。



寧ろ、寄り道しながら、沢山の景色を見るのが私は好きだった。
いつもとは違う風景を見つけることが出来るから。



「……河原?」




自動販売機の影で寝ている猫と戯れていると、聞き覚えのある声が耳に入る。
思わず、猫じゃらしの代わりをしていたリボンを落とした。



「水野先輩……と」



何で……あんたが……。



「何その顔?完全に俺のことを邪魔だと思ってるよね、君」



「……石神先輩」



私は、大好きな人No.1と、会いたくない人No.1の二人に自動販売機の前で会いました。
これは良い夢でしょうか、それとも悪夢でしょうか……。



**********



「トマトジュースとアイスコーヒー、一つ。河原は?」



「りんごジュースで……」



何で、こうなったんだろう。
何が、私達をこうさせたんだろう。



何故、私は三人仲良くカフェにいるんだろうーー。





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