唯一の涙

「俺と石神、バッティングセンターに行くとこだったんだよ」



そう言って先輩は、カフェの外を指差した。
そう、此処はバッティングセンター横のカフェだ。



バッティングセンターもここのオシャレなカフェも同じ人が経営してる。



「夏希〜、今日も来たんか」



「白石先輩!?」



さっき注文したドリンクを、片手で軽々と持った白石先輩が、何処からともなく現れる。
白色と黒色を基調とした制服に身を包んだ白石先輩は、慣れたて付きでドリンクをテーブルに置いた。



「驚き過ぎだよ。此処、白石のおじさんが経営してんの」



アイスコーヒーを優雅に味わいながら、石神先輩が説明してくれた。



「そう言うことや。河原ちゃん、贔屓にしたってな〜」



「は、はい」



そっか……だからお店の名前が【White Stone】なんだ。
苗字を英語に弄ったんだね。



「ちょっと打ってくる」



「俺も行ったるわ〜。なんたって石神くんってば、寂しがり屋さんやもんっ‼」



「気持ち悪い」



仲良さげ(?)に会話のキャッチボールをしながら、二人はカフェから出て行った。
いま此処には、先輩と私しかいない。





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