唯一の涙
「やっぱ、二人ってそういう仲やったんやな〜」
「えっと……」
「照れへんの。で?どっちから告ったん」
「あの……」
「どこまで行った?A B Cで言う……ど!?」
白石先輩のマシンガンのような質問攻めに合い、恥ずかしさが爆発しそうだった。
それに、イライラも。
元々私は他人から深く質問されるのが嫌いだった。
それが答えたくない内容なら、尚のこと。
思わず先輩が歳上だということも忘れて、手を上げようとした時、私よりも先に誰かの平手が白石先輩の後頭部にヒットした。
「いい加減にしな。虐め過ぎ」
平手の持ち主は、あの石神先輩だった。
先輩は私を一瞥すると、また前を向く。
何でだろう。
石神先輩って、何で私の気持ちが分かるんだろう。
初めて会ったときもこんな感じだった。
どうして何も言ってないのに、助けてくれるんだろう。
いつも、石神先輩は私のことなんか見てないのに……。
「馬鹿石‼河原に変なこと聞いてんじゃねぇよ‼」
バットを片手に先輩が飛び出してくる。
余裕が無かったのか、ヘルメットを被ったままだった。
「ちょっと揶揄っただけやって〜。はいはい、ヘルメットとバット返してきぃ」
先輩は白石先輩を一睨みすると、乱暴にヘルメットとバットを白石先輩に押し付けた。
そして迷わず私の手首を掴んで、バッティングセンターを飛び出す。