唯一の涙
ほら、今だって……。
「ーー五分休憩終了!!全員駆け足!!」
「「「はいっ」」」
全員、休憩中だっていうのに皆バットやら何やらを手放してないし。
どんだけ野球好きなんだ!…って笑ってしまう。
私は先輩達の置いていった汗と泥付きのタオルを回収して、洗濯機に放り込んだ。
今日は天気が良いから、洗濯物も直ぐ乾くなーーって、私は主婦か……。
「和歌ちゃん〜」
「蓮見先輩っ?」
二階の教室の窓から、蓮見先輩が身を乗り出して、私に大き過ぎるくらいに手を振ってくる。
その時、キラリと見えるのは金色に輝くトランペット。
「明日だよね〜⁉私達吹奏楽部も応援行くからね〜」
「有難うございますっ。先輩たちの演奏、楽しみにしてますから、熱中症に気をつけてくださいねー‼」
「もちろんっ、任せておいて‼」
蓮見先輩は面白そうに目を細めると、窓から離れて行った。
水野先輩と私のことは、蓮見先輩も知っている。
言う時凄く不安だった。
もしかしたら、蓮見先輩は泣いてしまうかもしれない。
勢いで水野先輩に告白してしまうかもしれない……って一人悩んでた。
『俺と河原、付き合うことになった』
水野先輩に肩を抱かれて言われた時なんて、心臓が爆発するかと思ったくらいだ。
蓮見先輩の顔が見れなくて、戸惑いを隠せないでいたのに……。
蓮見先輩は、私が思っているよりも、ずっとずっと強かったんだ。