唯一の涙
応援席に行くと、完璧にセッティングされた吹奏楽部が音出しを彼方此方でし始めていた。
沢山の楽器が鳴り響く中一際輝くのは、トランペット。
トランペットは全部で六本。
六本のトランペットがまるで一つになったかのように、会場を貫いていた。
「凄いわね、野球部の熱気。」
軽装な格好をした吹奏楽部の顧問が、私達二人の元に姿を表した。
一つに纏めた顧問の髪が、ユラユラと風に揺らされる。
「強いの?今日の対戦相手」
「はい」
顧問の先生の視線は野球部から、相手校の応援席に移った。
そして、意味深な微笑みを浮かべる。
「野球部はともかく、吹奏楽のレベルはうちの勝ちね」
「「………」」
私と錦君は顔を見合わせて、どちらともなく噴き出した。
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試合開始時刻になった。
私達は後攻で各自守備に着く。
〜♪*・ ・*:.。.. 。.:*・' ♪
相手校のブラスバンドの音色は、顧問が言っていた通り。
素人の私でも、イマイチだと思うほどだった。