俺と後輩と怪談と。
「二度と戻ることはない?」
「ええ、言葉そのままの意味ですよ。何でも切り取られてしまうんだとか。」
ああ、それで血染めの音楽室か。
「で、それがどうかしたのか?」
「この七不思議、俺達で解明しようと思いまして。」
「……は?何で?」
「んー…楽しそうだから、でしょうか。」
何とも楠木らしい解答だ。
「……何で俺も巻き込むんだ。」
「まぁまぁ、これも何かの縁ですよ。」
とあくまでも俺を巻き込むことは確定しているようだ。
「本当に単なる好奇心か?」
「90%はそうですね。」
「残り10%は?」
俺たちの足はちょうど音楽室の前で止まる。
「先輩、霊というのは元々生きていた者達です。彼らはあの世に逝くことも出来ず、たださまよい歩いている。」
隣を見上げて、視界に映ったのは悲しそうな瞳。
「どんなに訴えかけても伝わらない。姿さえ映してもらえない。だから、見える俺が力を貸すのは当然だと思いませんか?」
当然と言い切った後輩を格好いいと思った。
僻みではなく純粋に。
「……理由は分かった。で、何で俺もなんだ?」
「だから言ったじゃないですか。縁ですよ、縁。」
それだけか?と聞けば、それだけだと返ってきた。
「じゃあ行きましょうか。」
後輩の手がドアにかかった。