俺と後輩と怪談と。
「で、何を考えてたんです?」
「いや、大したことじゃない。何か用か?」
今日は背中が重くないから憑かれてはいないはず。
それ以外の理由で後輩が話しかけてくるとすれば……。
「決まってるじゃないですか。七不思議、解決に行きましょう。」
ああ、やっぱりか。
後輩が前の席に座る。
さっきまで慶が座っていたはずなのに、と教室を見渡すと彼は“見える”と言ったクラスメートの輪に入っていた。
「放課後なのに何かの話し合いですか?」
その輪を指差して後輩は言う。
「いや、あの輪の中心にいる奴が見えるんだとよ。」
「見える?」
「そ。楠木と同じものが。」
ああ、と後輩は納得した様子だった。
「どう?楠木から見て本当だと思う?」
慶にされた質問をそのまま後輩へぶつけた。
楠木は可笑しそうに笑う。
「残念ながら嘘でしょうね。確かめてみますか?」
「どうやって?」
「あの方に訊いてほしいんです。この教室には何人いるかと。3以外の数字を言ったのなら、嘘でしょうね。」
楠木に言われたとおり輪の中へ入って、クラスメートに訊ねた。
そしてすぐに輪から抜け出す。
楠木は教室の入口に背を預け、俺を笑顔で迎えた。
「どうでした?」
「2、だった。」
「残念でしたね。」
言葉とは裏腹に楠木は楽しそうだった。