俺と後輩と怪談と。
例の北校舎に向かいながら、ちょっとした疑問を後輩へぶつけた。
「俺達の教室には三人もの幽霊がいるのか?」
「ええ。さっきは三人いましたよ。大丈夫です。無害の霊でしたから。」
無害ねぇ。
まぁ楠木が言うなら問題ないだろう……。
「それで、今日の七不思議ってのは?」
「あ、はい、そうでしたね。」
そして後輩は語る。
――七不思議二つ目は壁男。
この学校を創立する際、建設業者の一人がコンクリートの壁に飲まれてしまったそうです。
そして8月29日、彼の命日になると寂しさを埋めるため誰かをさらいに来るそうです。
さらわれた人の行方は知れず…。
「8月29日って……」
「ええ、今日ですね。」
さらりと言われると緊張感が抜ける。
「まさか……また、さらわれろとか言うつもりじゃないだろうな?」
横目で睨むと後輩は笑った。
「大丈夫です。今回は少しばかり危険なので。そんな無茶はさせません。」
後輩の口から出た危険という言葉に、内心ドキッとした。
いつも問題ないと言う奴だから、危険という言葉の意味が重い。