俺と後輩と怪談と。
「じゃあ壁男という奴は、北校舎のどこにでも現れるってことか?」
「そういう事です。逆に言えばどこに現れるのかもわからない。」
それじゃ探しようがない、と呆れてみせた。
「だから先輩を連れてきたでしょう?」
「………え?」
「先輩ほど霊に好かれやすい人もいませんから。」
ニコッと後輩は微笑む。
つまり…
「俺は餌ってことか?」
「餌だなんて、人聞きの悪い。」
「じゃあ何だってんだ?」
「そうですね。敢えて言うなら……」
――幽霊を救う騎士(ナイト)でしょうか。なんて真面目な顔して言うもんだから、一発頭を殴った。
「……痛いです。」
「あまりにイラッときて。」
殴られた頭を撫でつつ、後輩は涙目。
まぁ、そんな事はどうでもいいんだけど。
「で、全然現れないぞ。壁男」
「んー……困りましたね。」
「本当にただの噂なんじゃないか?」
「だと良いんですけどね。」
困ったように笑った。
困ったように笑っていたはずの後輩が、突然……
「……ぇ」
――消えてしまった。