俺と後輩と怪談と。
居ない人
今日も楠木に連れられ、北校舎へと足を踏み入れる。
こんなのはすっかり慣れてしまった事で、ただ……
いつもと違う点が一つ。
俺の右隣には楠木が、そして何故か左隣には壁男の件で知り合った例の後輩が。
「……なんで居る?」
「楽しそうだから。」
ニコッと彼は答えた。
俺の記憶によると後輩の筈なのにタメ口。
まぁいいんだけどさ。
ちなみに楠木は不機嫌顔だ。
事の発端は今朝のこと。
いつも通りに登校して、教室に入ろうとした所に、この不思議な後輩が通りかかった。
「あれ、この間の人。なんだ、三年生だったんだ。小さいから一年生かと思ったよ。」
「……………お前、失礼な奴だな。」
思わずしかめっ面になってしまった俺に対して、彼は楽しげに笑った。
「それにしても、先輩おもしろい体質してるよね。」
じーっと俺を見て、いや正確には俺の背後を見て彼は言った。
まさか………。
「……なんか見えたりする?」
「先輩の首のあたりに抱きついてる女の人。」
なるほど。
コイツも見えちゃうタイプなわけか。