俺と後輩と怪談と。
それで楠木は気に入らないとか言ってたのか?
「先輩、何ていうの?」
「…なにが?」
「名前」
ニコッと微笑まれて確信したことが一つ。
絶対女子にモテるタイプだ。
「……加嶋 歩夢(カシマ アユム)」
「歩夢先輩かぁ。いい名前。あ、俺は仙道 庵(センドウ イオリ)。よろしく」
この差し出された手を取って良いものか……。
でも邪険にするのもなぁ。
「よろし――」
「――くしなくて良いですよ。」
と俺の言葉を横取りしたのは、突如現れた馴染みのある後輩。
「楠木……」
何て嫌そうな顔してんだろう………。
「先輩、この人には近づかないようにって言いませんでしたっけ?」
「いや……」
確かに言ってましたけど…。
俺から近づいたわけじゃないしなぁ。
「随分酷いこと言うんだね?」
仙道は楠木に笑いかける。
そんな火に油を注ぐような態度は………危険だと思うよ。
「それにしても面白い組み合わせだよね。」
仙道は俺と楠木の顔を交互に見る。
「……ちょっと話があります。」
楠木は仙道に言う。
「うん、いいよ。」
「ここじゃ、あれなので…別の場所で。先輩、放課後にまた。」
つまり俺には聞かれたくないってことか。
「ああ」
「その方も放課後に何とかするんで。」
と俺の背後を指す。
分かった、と返せば後輩二人は足並み揃えて立ち去っていった。