俺と後輩と怪談と。



「どうして泣いているの?」


楠木が見えない少女に問う。



少女は何と返しているんだろうか……。


「“みんなが私を無視するの”だってさ。」


隣に立つ仙道が俺に言う。


「先輩、体質は面白いけど見えないし、聞こえないんだよね?通訳してあげる。」



仙道の申し出は有り難い。



「みんな無視しているんじゃない。君はもう死んでしまっているんだ。」
「“私が?そんなはずないわ!”」
「落ち着いて。君は忘れてしまっているんだ。自分が死んでしまった時の事を。」
「“私は死んでなんかない!”……あ、まずい。先輩、下がって」



仙道が俺の腕を引いて、数歩下がった直後、跪いていた楠木が宙を舞って投げ飛ばされた。


楠木の身体は壁にぶつかり、そのまま床に倒れ込む。



「楠木!大丈夫か?」
「まぁ、何とか…」


駆け寄り顔を覗けば、顔をしかめているものの大事には至っていないようだった。


「それより、まずいんじゃない?」



仙道の言葉で、振り向けば教室内の机や椅子が宙を舞っていた。



「これって…」
「ポルターガイスト現象ですね。」
「……どうするんだ?」
「……どうしましょうか?」



あはは、と笑う後輩。

やっぱり、ろくな事にならなかったな。



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