俺と後輩と怪談と。
そこに在るはずの楠木の姿がない。
「楠木?」
呼んでみるけど、当然の如く返事はない。
いつぞやの壁男の時と同様に。
ただ、前回と違うのは……。
嫌な予感がして腕時計に目をやる。
――17時11分。
…ちゃんと時間見とくんだった。
前回と違うのは、どうやら七不思議に巻き込まれたのは俺、という事らしい。
俺は仕方なく廊下を引き返して、二階へ下りる。
はずだったのに、俺は変わらない風景にいる。
つまり下りた先も三階。
「迷いの廊下って……」
こういうことか。
こんな事ならちゃんと話を聞いておくんだった。
これって結構ピンチじゃないか?
その後も二回ほど階段を下ってみたけど、結果は同じ。
どうしたものか……。
やっぱり、ここは…
素直に諦めるべきだろうか。