俺と後輩と怪談と。



そこに在るはずの楠木の姿がない。


「楠木?」


呼んでみるけど、当然の如く返事はない。


いつぞやの壁男の時と同様に。


ただ、前回と違うのは……。

嫌な予感がして腕時計に目をやる。

――17時11分。

…ちゃんと時間見とくんだった。

前回と違うのは、どうやら七不思議に巻き込まれたのは俺、という事らしい。



俺は仕方なく廊下を引き返して、二階へ下りる。


はずだったのに、俺は変わらない風景にいる。


つまり下りた先も三階。



「迷いの廊下って……」



こういうことか。



こんな事ならちゃんと話を聞いておくんだった。


これって結構ピンチじゃないか?



その後も二回ほど階段を下ってみたけど、結果は同じ。


どうしたものか……。


やっぱり、ここは…

素直に諦めるべきだろうか。


< 39 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop