俺と後輩と怪談と。
腕時計の示す時刻は間もなく20時を過ぎようとしていた。
俺は、壁を背に廊下に座り込んでいる。
ちなみに窓から脱出しようとしたけど、失敗に終わった。
窓から飛び出しても、俺はこの廊下に戻ってきてしまう。
これでも一応、何とかしようとはした。
まぁ、全部無駄だったけど。
『守ってあげますよ』
楠木の言葉が頭をよぎった。
何の確信があるわけでもない。
それでも今、俺が冷静でいるのは……
楠木が迎えに来てくれると思っているから。
それって、
「……先輩としては」
情けないよな。
後輩の助けをただ待ってるなんて。
けど、一体どうすればいいんだ?
何かが現れて襲ってくるでもない。
正直、困った。
あと一時間もすれば学校が閉まる。
そうなれば楠木も強制的に学校を追い出される。
その前に何とかしないと。
そういえば、三階から抜け出そうとはしたけど、この三階を散策していなかった。
座り込んでいても何にもならないしな。
そう思って、俺は重い腰を上げた。