俺と後輩と怪談と。
人気のない校舎を、改めて一人で歩くと不気味だ。
この三階は教室ばかりが並んでいて、特別教室はない。
どの教室も机と椅子が並んでいるだけ。
これといって目を留めるものもない。
それにしても……。
別に襲ってくる訳でもないのに、どうしてここに閉じ込めるんだろう?
霊というものは生きている人間に何かを伝えたくて行動を起こすものじゃないのか?
なのにこれじゃ何も……。
……何かを、伝えたくて?
俺は思わず立ち止まった。
教室から物音が聞こえた気がして。
俺は教室のドアをそっと開ける。
誰の姿も見当たらない。
俺は中に入って、掃除用具箱の前に立つ。
どうしてかは分からない。
けど、この中から呼ばれているような気がしたんだ。
霊が行動を起こすのは、何かを伝えたいから。
俺は掃除用具箱を開けた。
そこには、膝を抱えうずくまる少年が一人。
「見つけた。君が、俺を呼んでいたんだろう?」
「うっ……うっ………お兄ちゃん誰?」
「もう泣かなくていい。君をここから連れ出してあげるから。」
そっと少年に手を差し伸べた。
少年はおずおずと俺の手を取る。
そして、笑った。
「ありがとう」
そう少年が言った瞬間、視界が光で包まれた。