俺と後輩と怪談と。
「――…い―――……先輩――――……先輩!」
強い揺さぶりで目を開けた。
視界には眉間に皺を寄せた楠木の顔。
「大丈夫ですか?」
「楠木………?」
「先輩、しっかりしてください。」
と、後輩は俺の頬を拭った。
俺は泣いていた。
「一体、何があったんですか?」
「…よく分かんない。ただ見つけることができた。」
「え?」
「あの子、笑ってくれたんだ。」
後輩は少し考えるように黙って、それから、そうですかと微笑んだ。
「もう少しで学校が閉まります。歩けますか?」
「……ああ。」
俺は楠木に支えられながら、北校舎を後にした。
後輩によれば、突然俺が消え、同様に突然戻ってきたらしい。
「一体何をしていたんですか?」
「さぁな。長いかくれんぼかな。」
「何ですか、それ」
俺はクスクス笑って、北校舎を振り返った。
三階の窓から少年が手を振っている気がして、軽く手を挙げた。
「どうしたんです?」
「気にするな。帰ろう」
七不思議を解明する楠木の気持ちが、少し分かった気がする。
そんな一日だった。