俺と後輩と怪談と。



「――…い―――……先輩――――……先輩!」


強い揺さぶりで目を開けた。



視界には眉間に皺を寄せた楠木の顔。



「大丈夫ですか?」
「楠木………?」
「先輩、しっかりしてください。」


と、後輩は俺の頬を拭った。



俺は泣いていた。



「一体、何があったんですか?」
「…よく分かんない。ただ見つけることができた。」
「え?」
「あの子、笑ってくれたんだ。」



後輩は少し考えるように黙って、それから、そうですかと微笑んだ。



「もう少しで学校が閉まります。歩けますか?」
「……ああ。」


俺は楠木に支えられながら、北校舎を後にした。



後輩によれば、突然俺が消え、同様に突然戻ってきたらしい。


「一体何をしていたんですか?」
「さぁな。長いかくれんぼかな。」
「何ですか、それ」



俺はクスクス笑って、北校舎を振り返った。


三階の窓から少年が手を振っている気がして、軽く手を挙げた。


「どうしたんです?」
「気にするな。帰ろう」



七不思議を解明する楠木の気持ちが、少し分かった気がする。

そんな一日だった。



< 42 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop