俺と後輩と怪談と。


「じゃあ早速いってみようか。」


仙道が俺に向き直る。


「歩夢先輩、だーいすき!」
「…………」



なんか、こう……

告白と言うよりは、小さい子に好かれた気分だ。



「何にも起きないね。やっぱりただの噂かな?」
「仙道先輩の告白が悪いんでしょう。」
「じゃあ楠木くんがお手本見せてよ。」
「いいですよ。」


今度は楠木が俺の前に立つ。


やっぱ相手役は俺なのね。


「先輩、好きです。」



そんな風に優しく微笑まれたら、男の俺でもドキッとするよ。
女子ならすぐOKするね、これは。



「楠木くんは本当、優男だねぇ。」


仙道は頭の後ろで手を組んで笑う。



――……ない。



「……ぇ?」



――……さないわ。



「先輩?どうしたんです?」
「今、何か…」



――……許さない!!!!!!!!!!!!




頭に強く響いた瞬間、凄まじい衝撃波が屋上を駆けた。


瞬間だけ目を閉じた。


次に瞼を開けたとき、視界に入ったのは屋上の外へ宙を描く楠木の姿。

その光景は、やたらゆっくりと進んでいく。



< 45 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop