俺と後輩と怪談と。
「じゃあ早速いってみようか。」
仙道が俺に向き直る。
「歩夢先輩、だーいすき!」
「…………」
なんか、こう……
告白と言うよりは、小さい子に好かれた気分だ。
「何にも起きないね。やっぱりただの噂かな?」
「仙道先輩の告白が悪いんでしょう。」
「じゃあ楠木くんがお手本見せてよ。」
「いいですよ。」
今度は楠木が俺の前に立つ。
やっぱ相手役は俺なのね。
「先輩、好きです。」
そんな風に優しく微笑まれたら、男の俺でもドキッとするよ。
女子ならすぐOKするね、これは。
「楠木くんは本当、優男だねぇ。」
仙道は頭の後ろで手を組んで笑う。
――……ない。
「……ぇ?」
――……さないわ。
「先輩?どうしたんです?」
「今、何か…」
――……許さない!!!!!!!!!!!!
頭に強く響いた瞬間、凄まじい衝撃波が屋上を駆けた。
瞬間だけ目を閉じた。
次に瞼を開けたとき、視界に入ったのは屋上の外へ宙を描く楠木の姿。
その光景は、やたらゆっくりと進んでいく。