俺と後輩と怪談と。



「死んでるって?楠木が?何言ってるんだよ?」


いつものくだらない冗談だ。

そうに決まってる。


決まってるのに、仙道はいつものような、へらへらとした笑みを見せない。



「冗談だよな?」
「……冗談だと思うなら、下を見てみなよ。」


俺はゆっくりと屋上の縁へ向かう。


一度息を吐き出した。



思い切って、下の地面を見下ろす。



そこには何もなかった。



あるはずのモノがなかった。



「な、んで……?」
「冗談なんかじゃないよ。」



振り返った仙道は悲しそうな目をしていた。



「最後まで黙っててあげるつもりだったけど、これは君のミスだよ。」


そう言って仙道は後ろを振り向く。



そこには、


「楠木………」


肩を竦めた後輩が立っていた。


「お前……」
「バレちゃいましたか。」



まるでイタズラが見つかった子供のような反応だ。



俺は思わず走り出した。


屋上を飛び出して、南校舎の方へ足を運ぶ。


どこへ行く?


確かめなきゃ。

そうだ、楠木のクラスへ行けばいい。


< 47 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop