俺と後輩と怪談と。
「死んでるって?楠木が?何言ってるんだよ?」
いつものくだらない冗談だ。
そうに決まってる。
決まってるのに、仙道はいつものような、へらへらとした笑みを見せない。
「冗談だよな?」
「……冗談だと思うなら、下を見てみなよ。」
俺はゆっくりと屋上の縁へ向かう。
一度息を吐き出した。
思い切って、下の地面を見下ろす。
そこには何もなかった。
あるはずのモノがなかった。
「な、んで……?」
「冗談なんかじゃないよ。」
振り返った仙道は悲しそうな目をしていた。
「最後まで黙っててあげるつもりだったけど、これは君のミスだよ。」
そう言って仙道は後ろを振り向く。
そこには、
「楠木………」
肩を竦めた後輩が立っていた。
「お前……」
「バレちゃいましたか。」
まるでイタズラが見つかった子供のような反応だ。
俺は思わず走り出した。
屋上を飛び出して、南校舎の方へ足を運ぶ。
どこへ行く?
確かめなきゃ。
そうだ、楠木のクラスへ行けばいい。