俺と後輩と怪談と。
放課後だと言うのに、生徒たちはそのほとんどが教室にいた。
楠木のクラスの教室も同様だった。
俺はそこで一人の女子生徒に声を掛けた。
誰でも良かった訳じゃない。
その子は壁男の際、楠木の所在を聞いた女子生徒だ。
俺はあの時と同じように問う。
“楠木はいるか?”と。
返事は次のようなものだった。
「またですか?だから居ないですよ。楠木なんて名前のクラスメート居ないんですって。」
なるほど。
あの時の居ないも、こういう意味だったのか。
どこか妙に納得して、俺は来た道を引き返した。
北校舎屋上では楠木と仙道が肩を並べ、俺を待っていた。
「納得した?」
仙道の問いに俺は頷く。
実感はないけどな、と付け足した。
楠木を見ればどこか残念そうな笑みを浮かべていた。
「さーてと、俺は一足お先に退散しようかなぁ」
仙道はごゆっくりと言葉を残し、去って行く。
屋上に残されたのは俺と楠木だけ。