俺と後輩と怪談と。





北校舎内に入ると楠木は迷うことなく階段を上がっていく。


途中、「絶対に振り返っちゃダメですよ。」と後輩は俺に念を押した。


「何で?」
「後ろの人に呑み込まれたくなかったら、振り返っちゃダメですよ。」


隣を歩く後輩は、笑いながら物騒なことを言う。


「この校舎は彼らにとっては聖地のようなものなので。」


力が強くなるんです。と楠木は言った。


楠木の言う“彼ら”とは、恐らく人でないものの事だ。



「さて、」


階段を上がりきって、楠木は足を止めた。


止まった階は四階。
北校舎の最上階だ。
さらに上は屋上になっている。



「先輩に憑いている霊は、階段から落下して不運にも命を落としてしまった哀れな霊です。」


……それはほんと哀れだ。



「その霊は先輩を仲間にしたいようですね。」
「はぁ……」


なんて迷惑な。


「ですから、先輩、一度落下してください。」
「は?」
「大丈夫ですよ。この四階の階段が一番段数が少ないんで。」



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