俺と後輩と怪談と。
「俺は二年前、この学校の入学式前日に死んだんです。」
「二年前……」
それじゃあ楠木は…。
「そうです。生きていれば、俺は先輩と同級生であるはずだった。」
「……そんな事」
――聞いたこともない。
「知らないのは当然です。学校側に口止めするように、それが俺の遺言でしたから。」
「どうして、その…楠木は」
「死んだ理由ですか?心臓病です。生まれつき弱くて、どのみち高校までは生きられないだろうと言われていました。」
精一杯生きた結果です。そう言った楠木は誇らしげだった。
「それでもこの世に残ってしまったのは、やはり心のどこかで高校生活を楽しみたかったという想いがあったからでしょうね。」
少し陰った瞳。
ついさっきとは打って変わった瞳の色。
そんなに悲しそうな目をするなよ。
「すみません。先輩を巻き込んでしまって。本当はね、七不思議なんてこの学校には存在しないんです。」
――少しの間だけでも高校生活ってものを体験してみたかったんです。
だから七不思議なんてものに乗じて、自分の中に制限を掛けた。
先輩と過ごす時間に。
「勝手ばかり言ってすみません。」
「本当、勝手な奴だ。」
本気で怒ってるわけじゃない。
でも瞳は合わさなかった。
「ああ、でも霊を救いたいと言ったのは本当です。生前から俺には不思議な力がありました。生きている時、俺は何も出来なかった。」
――動けませんでしたからね、笑いながら言う言葉が重かった。