俺と後輩と怪談と。
死にはしません。と笑顔で楠木は言った。
「…俺は今、幽霊よりお前が怖いよ。」
「大丈夫ですって。」
と後輩は俺の隣から正面へ移動。
階段を上がりきった所で止まっているから、後ろには当然階段が待ちかまえている。
「本気か?」
「受け身ぐらいはちゃんと取ってくださいね。3、2、1!!」
と元気な掛け声と共に、勢い良く突き飛ばされた。
俺の方が体格が小柄だから、身体は階段の下へと簡単に落ちていく。
言われたとおり受け身を取るも、なかなかの衝撃。
落下が止まったとき、至る所が痛かった。
「大丈夫でした?」
優雅に階段を降りてきた後輩は、膝を着いて俺の顔を覗き込んだ。
心配するぐらいならやるな、と睨む。
「怖いなぁ。すみませんでした、でもちゃんと祓えたみたいですよ。」
楠木が俺の身体を起こす。
軋む身体はしばらく痛みが引きそうにない。
でも一つ気付いたことがあった。
「身体、軽くなったでしょう?」
言われたとおりだった。
重くのし掛かっていた何かが無くなった感覚。