俺と後輩と怪談と。
楠木が壁際へと俺を運んだ。
「あの霊は先輩の命を狙っていたんですよ。自分の死因と同じ方法でね。」
楠木は隣に腰を下ろす。
「だから満足させてあげたんです。先輩を階段から落下させることでね。」
変なところで落とされるよりはマシでしょう?と後輩は言った。
それにしても。
「お前が思ってるより被害はあった。」
「だからすみません。」
謝られても悪びれる様子がない。
まぁ、祓えたならいいか…。
と半ば諦めた。
楠木が立ち上がり、手を差し出す。
「行きましょうか。もう痛みも引いてきたでしょう?」
確かに痛みは引いてきた。
手は取らずに、俺も立ち上がった。
つまらないな、と歩き出した楠木に続く。
「なぁ、楠木……お前って何者?」
「楠木 京汰。先輩の二つ年下、ただの高校一年生ですよ。」
「いや、そういう事じゃなくて……まぁ、いいか。」
何とかなったしな。