昼下がりの科学準備室で
「生徒にこんなこと言わすなんて、俺の方がどうしようもない教師だな、」
「・・・・?せん、せ?」
私を覆っていた先生の影が、離れた。
顔を上げると、立ち上がって後ろを向く、先生の背中だけが見えた。
・・・・先生の、気持ちは?
「せ、先生、あの・・・返事を」
「ああ、分かってる。でも、もうちょい待て・・・一回落ち着くから。」
私に背を向けたままで、答える。
なんで、こっちを見ないの?
なんで、私から離れたの?
先生・・・・・
「・・・山本、お前・・・耳まで真っ赤にすんのは、ナシだろ・・・」
先生は、こっちも見ずに、話し始めた。
え?私・・・・・
そんなに赤くなってたの・・・・?
そんなこと聞いたら、また更に顔が熱くなる。
感情がモロに顔に出ていたみたいだ。
恥ずかしい・・・・。
「あんな顔、あの距離で見せられたら、歯止め、利かなくなるし・・・」
「・・・・あの、それって、どういう」
「俺も、ずっと、お前のこと、意識してんだよ・・・」
話しながら、再び、座り込んだままの私にゆっくりと、近付く。
そして、少し身を屈めると、私の耳に顔を寄せた。
「つか、わざわざ優等生ぶってたのかよ、お前」
その皮肉めいた微笑に、きゅうっと胸が締め付けられる。
胸に手を当てて、その高鳴りを押さえ込むのに、必死だ。
「ふっ、その仕草とか・・・ほんっとにもー・・・可愛すぎて困る・・・」
俯く私の額に、額を重ねる。
顔が近すぎて、また、息がうまくできなくなってきた。
先生・・・・
これは、夢じゃないですよね・・・?