昼下がりの科学準備室で





ようやく見慣れてきた眼鏡なしの先生の顔に、眼鏡をかけさせてあげた。

うん、やっぱり。
こっちの顔のほうが、しっくりくる。



「うん、山本だ」



よく見えるようになった目で、改めてそんなことを言う先生が、なんだか可笑しい。
だって、あまりに真面目なトーンだから。



「あ、笑った!」


「え?」


「お前の笑顔、初めて見た。すげー可愛い。」



予想外にまた、雷を落とされた。
自分では自分を可愛いなんて思わないけど、先生に褒められると、素直に嬉しくなる。

先生はすごいなぁ・・・

あんなこと、照れずに言えるなんて。



「だめだ・・・やっぱ、恥ずかしすぎる・・・」



って、思ったけど、先生も一杯一杯だったみたい。
首を下げ、私には顔を見せないようにして、深い溜め息をついた。

余裕ない先生も、また素敵だ。

私につむじを向けて俯いた先生の頭を、わしゃわしゃと撫で回す。
先生は、撫でたくなるような、見るからに柔らかい髪の毛をしている。
撫でてみても、予想通り、ふわふわの猫っ毛だった。



「バカにしてる?」


ぶんぶん


「首振ってちゃ分かんないよ」


「せ、先生、が・・か、かわい、かったので・・撫でました・・・」


「ははっ・・・なんだよ、それ・・・」



やっぱり私は、こうやって子供っぽく笑う顔も、たまに見せる真面目な顔も、ちょっと意地悪な顔も、好きだ。






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