My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
あそこは確かに安易に近づけない場所でもある
戦の最中なら、尚の事――
鉱山に囲まれた国、クレム
一見、完璧な要塞にも見えるが、逃げ道がない事で知られている
きっともう、周りは敵で溢れているだろう
「どのようなもので?」
少し考え込む様な素振りを見せた父だが
また顔を上げて、陛下に言葉の先を問いかける
「この戦を左右するものだ。王には伝えてある」
そう言うと、近くに控えていた者が恭しく羊皮紙を両手で持ってきて、父に手渡した