My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
ちらりと隣にいる父の手元を見る
その羊皮紙は厳重に蝋で封をされており
表にはヴェントスの紋章が押されている
ただの書簡ではない事は一目瞭然だ
頼まれ物を受け取った父を、陛下はじっと見つめる
鋭い瞳が、太陽の光を取り込んでキラリと光った
「頼んだぞ。ゲル――確実に王に届けるのだ」
「――はっ」
「アレンも共に」
「はっ」
その言葉を聞き、深く頭を下げた瞬間
衣擦れの音と共に、陛下は姿を消した