My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「名は――」
「去れ」
彼女に近づこうと、足を一歩前に出して頼りない声を落とした瞬間
強い言葉が返ってくる
その言葉に、思わず出した足を止めた
くっと細い顎を引いて
真っ直ぐに俺を見つめる彼女
美しいターコイズの瞳が、揺れる事なく俺を見据えている
「俺は――っ」
その瞳に吸い込まれそうになりながらも声を出した瞬間
再び、強い風が吹いた
その強さに、反射的に目をしかめる
そして、瞬きをした瞬間
――彼女の姿は、そこになかった