My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「確かに、あそこはゲイルに襲われたという話をよく聞く」
「だから、私達に託したという事だな」
「ただの使者だったら、簡単に殺されるからね」
「大事な書簡だ。殺されて中身を見られては、両国の信頼に関わる」
険しい顔つきで胸元から取り出した書簡を見つめる父
その姿を横目に、せっせと馬に荷物を括り付ける
ゲイルは束になって襲ってくる
一瞬の油断が命取りになる
だから、いつも以上に装備を厳重にしておく必要があった
「軍を率いて動くわけにもいかぬからな」
「そうだね。クレムに入る道は狭い」
「信頼してくださっているんだ。名誉な事だ」
そう言って、持っていた書簡を大事そうに胸元に仕舞い
勢いよく立ち上がって馬の元まで歩く父
そして、既に荷物を括り付けられた馬の首を優しく撫でた
「気を抜くなよ。アレン」
「あぁ。少し遠回りしてでも、確実な道で行こう」
真剣な顔の父の顔に微笑みかけて、準備が整った馬の背を軽く叩く
コイツにも、頑張ってもらわなきゃな
「行こう。父さん」
そして、勢いよく馬に飛び乗り
駆けだした