My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「彼女は王族なのか――?」
自分の顎に手を添えて、小さく呟く
しかし、返して欲しい言葉は返ってこない
目の前の人は、顔色こそ戻ったものの
未だに、その瞳を開けてはくれない
「父さん」
小さくその名を呼んで、額に手を乗せる
じんわりと熱を感じて、少し安心した
「早く目を覚まして。一緒に国に帰ろう」
毎日、父に話しかける言葉
ヴェントスを誰よりも愛する父だから
きっと帰りたいと思っているはずだ
「ここにいらしたのですか」
じっと、その顔に刻まれた皺を見つめていると
柔らかい声が背中を叩いた