My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


「なぜ...」



すると、小さな彼女の声が響く

真っ直ぐに俺に向かって




「なぜ人は、奪いあうのか」




ゆっくり立ち上がったソフィアが、静かに俺に歩み寄ってきて、言葉を落とす


ターコイズの瞳が絶えず歪む

金と銀に輝く髪が、風に乗って揺れる


彼女の背後に輝く月が、柔らかく降り注いでいるのに

俺達の周りだけ、どこか冷たかった





「命より大切なものが、他にあるのか?」



苦しそうに、そう言うソフィア

小さな唇を噛んで、俺を睨む




「――命より大切なものはないよ」

「ならばっ」

「でも、戦わなければ命は奪われる。だから守る。それだけだ」



悲しいけど

殺さなければ


殺される。


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