My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「――…海。そなたの国は、海が見えるのか?」



懐かしむ様に言葉を紡いでいた俺の顔を覗き込んで、そう言うソフィア

その瞳が、いつもより好奇の色を映している



――ん?



不思議に思って一瞬考え込む

なんで、そんなに『海』という事に食いついてくるのか

でも、少し考えてピンときた




「――そうか。ソフィアは海を見た事がないのか」




深い森に囲まれた、この国。


そして、この国を抜けたとしても

広がるのは広大な草原



ましてや、この国の民は他の国との交友を一切行わない

この国から出ないで一生を終える事もある




この深い森に囲まれて

一生を終える事も


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